神医 華佗の逸話

シャクヤク(芍薬)の薬効発見

華佗は薬草を栽培して標本を作るのが好きで、その標本を元に薬草の種類(本物か偽者か)を判断し、誤った薬の使用を防止していました。そのため華佗の家の周辺はいつも薬草でいっぱいになっていました。

その頃、譙陵任州(安徽省亳州市)の役人であったある杭州人が、華佗の医術の高さを知り、華佗と良い友人となり深く交流をしていました。彼は華佗が薬草を栽培して標本を作るのを見て、郷里(杭州)から一株のシャクヤクを持ってきて「私はこのシャクヤクが本物か偽者かわからないが、一株あなたの為に持ってきた、まあ、試してみてほしい。」と言って、華佗に送りました。

華佗はとても喜んで、このシャクヤクを家の窓の外に植えました。

二年後の春、シャクヤクは蕾をつけ非常に美しい花を咲かせました。華佗はまずこの花を試食し、その後葉を試食しましたが、当時、華佗はまだシャクヤクを薬草として採集する季節を掌握しておらず、春のシャクヤクは薬には使用できないことも知らなかったので、「薬らしい味は何もしない、また特別なものも無いように感じられる。」と思い、そのまま数年間放っておきました。

ある秋風の爽やかな夜、夜が更け人が寝静まった頃、華佗は灯り下で熱心に、どの薬がどの病気に対し効果があるのかという内容を医学書を書いていました。すると突然、窓の外から一人の女性の泣き声が聞こえてきました。彼は顔を上げ窓の外を見ると、月光に向かって緑の衣服を着て頭に紅花を着けた美しい女の子が立っていました。「あれはどの家の女の子だろう?なぜ真夜中に声を上げて泣いているのだろう?何か辛いことでもあったのだろうか?」

筆を置いて窓際から外をよく見渡してみると、人影など何処にも無く、女の子が立っていると思った場所にはシャクヤクが植わっていました。華佗は不思議な気持ちに駆られ「まさか女の子だと思ったのは、このシャクヤクだったのだろうか?」と思いましたが、「今は既に初秋で、花も枯れ、葉も硬くなってしまっている、大した用途もないであろう、ましてやこれといった薬用効果も無いのだし。」と独り言のように呟きながら、さっさと家の中へ戻って行きました。

家の中へ戻った華佗は、先ほど置いた筆を取り続きを書こうとすると、また外からあの女の子の泣き声が聞こえてきました。再び顔を上げて窓の外を見ると、やはり先ほどの女の子で、泣き声は更に大きくなっていました。彼はまた外へ出て様子を見てみると、やはり何の人影も無く、同じようにシャクヤクが秋風に揺れているばかり。何度か同じような事が続き、これは尋常ではない思った華佗は、妻を呼び一部始終を話して聞かせました。

妻は華佗に対しこう言いました。「この家の周りの草花は、全てあなたが自分の手で植えたものです、その全てがあなたの手で良薬になって、多くの病気を治し、多くの人を救いました。でもこのシャクヤクだけが、あの場所でひっそりと無用の様に佇んでいます。あなたがあのシャクヤクを気にかける事も無く、理解しようともしないので、シャクヤクは悲しく思い泣いていたのではないでしょうか?」

華佗は妻に対しこう言いました。「私は既に何度もあのシャクヤクを試してみたよ、花も葉も何の用途も無い、どうやって薬にしろと言うのだ?」

妻は「花も葉も試してみたのですね、では根は試してみましたか?」と華佗に言うと、華佗は「花も葉も用途が無いのだから、根を試す必要など無いだろう。」と言いました。

華夫人は華佗が少しイライラしているのを感じ、「あなた、もう夜も遅いですから、早く休まれたほうが良いですよ。」と言い、疲労を感じた華佗は部屋に戻りすぐに寝てしまいました。

しかし、華夫人は考えれば考えるほど不思議に思い眠れなくなり、シャクヤクが泣いていたのはきっと辛い思いをしているのだと確信し、必ずシャクヤクの用途を発見しようと決心すると、次の日の早朝、いつもより早く起き、朝食の支度をするのを装い、包丁を持ち、決心をすると自分の手をその包丁で傷つけました。手からはあっというまに血が流れ、華夫人はすぐさま華佗を呼び、驚いて駆けつけ傷口を見た華佗は、急いで「刀傷薬」を塗りましたが、血は止まらず、手の打ち様がありませんでした。

華夫人は華佗に「シャクヤクの根を掘ってきて、試してみてください!」と言うと、華佗は薬草を掘る道具を持ちシャクヤクの根を掘りに行き、それを磨り潰し妻の傷口に塗りました。すると見る間に血は止まり、喜んだ華佗は「ほう、これは凄い、すぐに止血できたぞ!」と声を上げました。そして数日後、傷口は完全に治癒し傷跡もほとんど見られませんでした。

華佗は妻に対し「君の熱心さと流した血のお陰で、この素晴らしい薬を発見することができた。もし君がいなければ私はこの良薬を埋もれさせていただろう。」と言いました。

その後、華佗はこのシャクヤクの根を入念に研究し何度も試験し、止血としての効果だけではなく、活血、鎮痛、滋補、強壮の効果、また月経不順を調整する効果、更には婦人科においても優れた効果があることを発見し、本に書き留めました。

シャクヤクは産地によっていくつかの品種に分かれます。譙陵(亳州)のシャクヤクは白色で最も質がよく“白芍”(亳芍)と呼ばれ、杭州のシャクヤクはは赤色で二番目の品質を誇り“赤芍”(杭芍)と呼ばれています。またこのシャクヤクは後に四川に伝り、“川芍”と呼ばれる品種が生まれました。

華佗の薬草の栽培と研究の為、後に譙陵(亳州)のシャクヤクは発展し、どの家にも植えられるようになり、春には花の香りを町中に漂わせ、また全国的に販売されるようになりました。そのため亳州は“シャクヤクの郷”と呼ばれています。

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